ちょうどその頃、近くの団地で部屋を「増築」して広げる工事が行われた。「隣の芝生」に刺激され、「うちなら、建て替えでもっと広く、モダンにできる」との声が上がる。確かに「容積率(敷地面研に対する延べ味面哨の割合)」にはたっぷり余裕があった。二万五〇〇〇坪の戦地の二七棟すべてが、五階建て。容積率は、六〇パーセント程度に抑えられていた。都市計画法に基づく、団地の用途地域は「第一種中高層住居用地域」。容積率は二〇〇パーセントまで認められている。三倍の大きさの建物に変わっても、二〇パーセントのおつりがくる。このまま土地を遊ばせておくのはもったいない。上昇し続ける地価で試算すれば「自己負担ゼロで、一・五倍の新居」もあながち夢物語ではなさそうだ。加えて建物の「老朽化」が静かに進行し、建て替えへの心理的な圧力が生じていた。老朽化は、ふたつの基軸で進む。まず、コンクリートの亀裂や○○・排水管や水回り設備の機能が衰えての漏水、赤水といった目に見える「物理的老朽化」である。